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執筆者の写真Takeshi Sekine

家業に入る前の修行について

 これから後継者を迎え入れる現役社長さん、将来の後継者を目指すアトツギの皆さんは、このテーマについて考えていることと思います。私の場合、後継者修業を意識してサラリーマンやっていたわけではありませんが、10年間のサラリーマン生活を経たのちに家業へ入りました。どんな事に配慮しておくべきか、私の経験から気づいた事を書きます。




外で飯を食う意味

 何の目的で、他社で働くのか?

これは、親の後を継いで経営を任される将来がある程度決まっているのであれば、サラリーマン勤務を始める前に親子で話し合うことをお勧めします。目的を明確にしてからは働きだした方が良いです。


 1つ重要なことをお伝えしたいのですがサラリーマン生活で経営を学ぶことは不可能だと思ってください。ベンチャーに入り経営者のカバン持ちをするのなら話は別ですが、大企業の一社員として働くのであれば、経営者修行にはなりません。大学出たばかりの若者がサラリーマン生活を通じて経営を学ぶことは難しい。せいぜい、業界の構造や競合、トレンドなどは学べる程度と考えてください。


経営者としての学びは他社でなくとも家業に入ってからでも十分学ぶことはできるので、私個人としては経営者としての学びは、あまり期待もしない方がいいですし考える必要もないと思います。


 親からすると、重要取引先とのパイプを強化する目的も考えて後継者を送り込むことも考えられますが、これも修行という観点で考えると微妙です。確かに、将来の取引を考えると盤石さが増す可能性はあり得ますが、将来にわたってその取引先と一心同体という関係が続く保証はなく、後継者の大切な修行時代の時間とエネルギーをそこへ注ぎこむのは少しもったいない気もします。



私が考えるに、外で飯を食う意味とは...

自分の経験を振り返って思う事ですが、外で飯を食う意味は組織で働くサラリーマンの考え方や生活、苦労、楽しみを学ぶことです。トップを観察するよりも同僚を観察した方が経営者をめざす人にとっては大いに勉強になります。


自分が人を動かす立場になったとき、サラリーマン時代にはこんなことを考えていたな。。。という事を思い出す。そうすることで部下を上手に動機づけたり、自分の考える方向へ誘導することができるようになる。


つまり、修行中に部下(=組織に一員)としての生活を体験し、彼らの気持ちを理解することが最も重要だと私個人としては考えています。


一度でも家業以外で雑巾絞りやっておけば、社員に対して横柄な態度をとったり、強権政治のような経営をすることはないでしょう。また、成果を上げた時、失敗したとき、上司から賞賛や指導を受けることによって部下の育て方もわかってくるでしょう。


サラリーマン時代には、ビジネスを学ぶというよりは人の気持ちを理解できるように意識して人間関係が及ぼす影響を学ぶべきではないかと思います。それが「外で飯を食う意味」です。




さて、どんな会社を選ぶか?

 私の場合、修行するという感覚や意識は一切なく、純粋にサラリーマンとして生きていくことを前提に自分の興味がある業界・会社を選んでいきました。家業に入るまでに3社も働くことにはなりましたが、今でも付き合いの続いている同僚、先輩、後輩がたくさんいます。サラリーマン生活は、生涯わたる友人を作れるというメリットも修行にはあると思います。いきなり家業に入ってしまうと、友人はそうそう作れません。社員とは友人関係に慣れませんし、修行時代に友人を作ることは大切なことだと思います。



お勧めは「好きな会社に入ってください」

会社を選ぶことも自分の選球眼を鍛えることになります。家業において「技術力」が重要ということであれば、技術を学べる会社に入ればよいと思いますし、あまりあれこれ将来の事を考えずに会社は決めていいと思います。その選択結果も、自分の力量・実力を知ることになるので大事なのです。人が敷いてくれたレールに沿って進むよりは、自分で苦労して選んだ方が良いかと思いますね。


 繰り返しますが、経営者としての勉強は、家業に入ってからでも十分間に合いますし、経営者修行は経営者になってみないとできないです。サラリーマンできる機会を与えてもらえるなら、むしろ遊んでおいたほうが良いです。若いうちにしかできない遊び、チャレンジを楽しんだ方が良い。



もう一つの選択肢として「起業」があります。

実は私の押しはコレです。

学生時代に起業するもよし、サラリーマンを半年から1年やって起業するもよし。

起業は修行ではなく、経営者としての実践なので一番勉強になるはずです。

親会社の一子会社として始めてもよいですが、できることなら関係ない業種業態で起業した方が良いですね。相当な勉強になると思います。


余裕があるのであれば、大学卒業後にMBAなどの1年通い、経営の基礎知識を身に着けた上で起業するというのであれば失敗の可能性を抑えることができますし、将来に役立つ勉強にもなります。私も人生を逆回転させることができるのなら、若いうちに起業しておけばよかったと思っています。




まとめ

  1. 経営者としての修行は、基本的にサラリーマンではできない

  2. 会社員勤めをするなら、部下の立場を経験し人心掌握や人の育て方を学ぶべし



以上

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