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執筆者の写真Takeshi Sekine

家業から身を引いて、いま思うこと

 16年半という期間に渡り、父親が創業した会社で経営に関わった。そして2022年2月に会社から身を引きました。今回は、いま思っていることを書きたいと思います。





16年半の経験で得たもの


~お金では買えない修羅場経験~

まず、頭に浮かぶのはお金では得られない貴重な成長の機会が得られたことでしょうか。これが得た中で最も大きなものかもしれない。そして、その機会(=修羅場や苦難)を乗り越えてきたことで、自分で言うのも何ですが確実に経営者としての力量は上がったと感じています。こういう機会というのは、待ってて来るもんじゃないです。「若いうちは、お金払ってでも苦労しろ」という事を言う方もいますが、本当にそう思いますね。ただ、私が通過してきた修羅場は半端ないです。映画や小説になるぐらいのインパクトがありました。絶対絶命の危機という場面もありましたので。今振り返っても、二度と味わいたくない苦痛でしたね、正直なところ。



~人への感謝の気持ち~

次に、人からの親切・支援に対して心から感謝できるようになったことです。これは経営者としても大切な要素ですが、そもそも、一人の人間として社会の中で生きていく上で必須の感情であり、それまで人への感謝の念が薄い自分が大きく変化したことは、大きな喜びでもあり人生が本当に楽しくなったという実感も感じています。人は痛い目に遭うまで、大きく自分を変えることはできない。一皮むける経験とはそういうものなんだなと実体験を通して理解したことです。

この感覚、感謝の気持ちを得たことにより、何か自分が困ったときは遠慮なく周囲の人へ助けを求められるようになりましたし、人脈も何となく増えているような気がします。



~諦めないしぶとさ~

これも大きいですねー。若いころは、とにかく効率よく仕事をこなす、結果を出す、、、という思考パターンに凝り固まっており、結果が出ないものは直ぐに諦める性格でした。熱しやすく冷めやすいという言い方もあるかもしれません。猪突猛進で新しいことに、ドンドン突っ込んでいく。でも結果が出る前に諦めてしまう。しかし、当時の自分がどう考えていたかというと「見切り」という思考なんです。結果が出いないと予測して「迅速な判断を下した」くらいに思っていた、思いあがっていたんですねー。これは大きな間違いです。


経営者であれば、目標・目的を達するまで諦めないしぶとさがないと会社の経営などできません。業績だけでなく、人材育成に関しても同様です。ちょっと仕事を任せてみて「あ、ダメだな」と思った瞬間に異動させたり、仕事を取り上げるような事をしてしまっては絶対に社員は育たないし、社員と経営者の人間関係は良好なものにならない。


この「しぶとさ」というのは、なかなか重要なスキルかもしれませんね。私もまだ十分ではありませんが、一応身につけられたことは今後の人生においても大きな強みとなるだろうと思っています。



~人の役に立ちたいという欲求~

昔は、正直、偽善者というか偽モノの社会貢献論者だった。利益を得る手段として社会貢献が必要と考えていた。そういう考え方が悪いわけではないのですが、私には馴染まない考え方です。今となっては。



仕事というのは、お金を得る手段であることは間違いないのですが、それと同等くらい相手(=お客様)に喜んでもらいたい。今は、そういう気持ちが強いですね。


また、仕事以外の私生活や人付き合いでも、人から頼みごとをされればできる限り要望に応えようとしています。損得抜きで勝手に体が動くという事もあります。昔は損得、貸し借りを考えて人の頼みごとを受けていた節があります。そこは否定できない。でも、今は純粋な気持ちで相手が困っているなら助けたい、協力したいと考える事が自然になりました。


おかげで今は余計な損得を考えなくなったので、無駄に頭を回転させることもなく、見返りを求めていないので腹立つような事も殆どないですね。本当にありがたいことです。



~集団で成し遂げる成功体験~

アトツギの方であれば、仕事を介して事業に成功する方もいるでしょう。同じ成功、結果であっても自分の力でやり切った結果と、社員を巻き込んで得られた結果では満足感が全く違います。アトツギは何でもやろうと思えばできてしまう立場です。しかし、それをやった時、結果が出たとしても下手すると自己満足に浸っている自分に気づけない事もある。


本当の成果というのは、経営者であればわかると思います。皆で力を合わせて汗を流して得られた結果は一味違う。幸いにして私は、この体験を僅かではありますが感じる事ができました。とても素晴らしい感情というか満足感でした。結果に満足するというよりは、苦しい場面を乗り越えて成長してくれた部下の人たちの様子を見ることが嬉しいというのが本当のところかもしれません。自分は黒子で十分なのです。社長は黙っていても結果が出れば評価される。それを「俺の手柄だ」と誇らしげにひけらかすのはスマートじゃないですよね。本当の喜びや誇りに思えることは他にあるはず。それに気づけただけでも私は幸福でした。



~会社に対して思う事~

会社の本分を見誤ることなく社会に貢献し、会社という船に乗って人生を生きている社員が幸せであって欲しいと願い続けています。今は、感謝しかない。




~これからの将来~

今年の4月から大学院に通い、いわゆるMBAというコースに通い学んでいるわけですが、今まで我流で体得してきた経営スキルを棚卸し、ゆがんだ知識や感覚を補正・補強しています。多くのクラスメイトは、卒業後、コンサルタントとしての独立を目指して学業に励んでいるわけですが、私はコンサルタントという職業に特化する考えはなく、あくまでもビジネスを行う経営者でありたいと考えています。商品としてコンサルティングサービスを提供するビジネスをやっていきますが、将来は経営の仕事に専念したいと思います。ただ、これから挑戦していくことが軌道に乗り、家族を養っていけるかどうかは未だ未知数です。不安も感じます。でも、今まで体得してきた自分の強みを頼りに難局を乗り越えていきたい。



今、思っている事でした。






以上







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