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執筆者の写真Takeshi Sekine

家業・・・ここが変だった! #3(最終回)

更新日:2023年5月28日

 連載ブログ第3回(最終回)、今回はファミリー企業に於けるブレーキ装置不在のリスクについてのお話です。





#3 投資の判断について

 田舎の中小企業を継いでいる皆さんは、どのように投資判断をされていますか?

今回、記載する内容は私のいた家業に関わらず、多くの中小企業で見られる現象かと思います。


それは、新しい設備投資、新しい事業を始めるなど、新規投資の意思決定についてです。


私が在籍中に行われた投資金額の大きい新規事業は主に3つ。そのうちの1つは私自身が手掛けた新規事業で会社に大きな損害を与える事業でした。私自身が間違いを犯していたんですね。今でもあの事業は下手を打ったな、みんなに迷惑をかけたなと反省しています。



 これは私の視点からの見方ですが、新規事業を始めるのであれば、その事業の市場性、競合状況、自社の強み・弱み、期待できるシナジー、そして本当に儲かるか?等を事前に調査検討してリスクを把握した上で、リスクとリターンのバランスを考えて最終的な決断を行うのが教科書的な意思決定プロセスだと思います。創業社長は、これを勘でやってのける特殊能力を持つ方もいますが、二代目以降の経営者には無理です。


しかし、多くの中小企業では、この作業をすっ飛ばし、”何となくいけそう”、”面白そう”という思い込みでスタートしてしまう。私自身が始めた事業は、損益試算など細かくやっていましたが、なにせ畑違いもいいところの事業であったため案の定、3年くらいで撤退することとなりました。損失が積み上がり、状況の改善が見込まれない場合、私の事業のように速やかに(3年でも長すぎました)撤退すれば、そこで損失は止まりますが、これを決断するには勇気がいるものです。


あと少し頑張れば、あと少し頑張れば。。。その頑張る中身(=打ち手)が今までとは違って、問題が的確に捉えられており、明らかな解決策となる新しい打ち手を用意した上で、あと少し。。。であれば、まだ試す価値はあるのですが、従来のやり方をそのまま続ける”あと少し”は、リスクに対して頭から突っ込むような自殺行為とも言えます。


現実は、皆さん、いかがでしょうか?

今まで投資して頑張ってやってきたから、”あと少し”となっていませんか?


中小企業だけでなく、大企業でも起こり得る話です。

その問題事業が、創業者、あるいは私のような創業家一族の人間が始めた事業となれば、社員は問題があると分かっていても撤退の”て”の字も言えない状況だと思います。


どれだけ優れた経営者・創業者であろうと、人間である限りは必ずミスを犯す。

ミスと分かれば、自分のメンツやプライドなど気にすることなく、会社の利益を考えて早めに適切な方向転換や撤退を決断すべきなのですが、それを潔く出来ないのが人間というものです。


 ここまで書いてきた新規事業・投資に関する意思決定のルールを変えることなく、そのまま放置すれば、また同じことが起きます。事実、家業でも私が退任するギリギリまで利益を全く生まない事業がズルズルと継続されていましたが、私でさえも誰も止めることができませんでした。強く反対すれば”切られる”というリアルな恐怖感を常に抱いていました。なぜなら、私は筆頭株主ではなく株主総会を制すことができる状況になかったからです。この恐怖心は常に私の足かせにもなっていて、大きな悩みの種でもありました。





やり残したこと

 この問題、最後まで私にはブレーキをかける手段・機構を整備することなく代表取締役の退任を迎えます。これだけは大きな心残りであり反省すべき事でした。


新しい投資をする場合、それが本当に会社の価値向上につながるのか?、お客様へ提供する価値が上がるのか?、競争力が高まるのか?、リスクはどうか?、期待するリターンを見込み通りに得られるのか?

 投資を行った後、毎月のように損益状況を確認し、軌道修正や災厄の場合は速やかな撤退を意思決定できる仕組みによって、会社として正しい経営判断を行うべきなのですが、私は最後の仕上げでそれを完成できなかったのです。


 本来であれば、代表取締役は業務執行の最高責任者であるため、事業に関わる決断は全てできるはずですが、企業によってはそれが出来ない事もある。これはファミリービジネスに限った問題ではなく、大企業でも中興の祖、神のような創業者が引退してもなお、権力を握っている場合、このようなことが起こり得ます。これが日本企業特有の現象なのか、あるいは世界的にも、このような現象が起きているのか分かりませんが、後継ぎとしては何とかしなければいけない問題です。


 この経験から、コンサルティングを行う中で、このような兆候が見られる顧問先には細心の注意を払いながら、この問題を解決する対策をご提案していきたいと思います。




この連載は今回で一区切りとさせて頂きます。

来週からもアトツギ経験者の目線で、皆様のお役に立てる話題でブログを書いていきます。

引き続き、どうぞよろしくお願いします!




以上

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