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執筆者の写真Takeshi Sekine

経営者の「自由 と 責任」について

 私自身も父が創業した会社を継いだ後継者でした。私の場合、社長に就任するまでに様々な辛いことや理不尽な経験をしていたため、浮かれるなんてことは全くありませんでした。しかし、世の中には浮かれて好き勝手やってしまう後継者も多い。今回は後継者の皆さんに理解して頂きたい経営者の自由と責任についてです。



社長なら何をやってもいいのか?

 最近のニュースなので皆さんもご存じだと思いますが、ENEOSの代表者がセクハラを犯し解任されています。関連会社を含めると3名の社長がセクハラで解任されるという前代未聞の事態です。まず、セクハラは絶対にダメですよね。これは誰でもわかること。


次に考えたいこととして、ファミリービジネスにはよくある話ですが、会社のお金を私的流用してしまう行為。社員がおらず、自分ひとり、あるいは夫婦二人でやっている会社であれば話は別ですが、ちゃんと社員を雇い商売をやっている会社であるならば、これはダメですよね。基本的には夫婦二人だろうが、自分一人だろうが会社のお金を私的流用することはNGです。


このように会社の私物化はだめ。

この他、法令違反、モラハラ、パワハラなど、ここまでのことは、およそ誰もが想定できるNGだと思います。難しいのは、この先です。事業戦略についてです。





個人的な趣味で経営をやってはいけない

 会社の目的は利益を上げることです。その利益を上げるために社長は様々な戦略を考えて実行していきます。経営トップの世代交代が生じれば当然ながら戦略転換というものが生じる。これが賢い選択であり、会社の価値を高める戦略転換、投資であるならば歓迎すべき変化です。しかし、世の中理想的な話ばかりとは限らない。


仕事柄、いろいろな事業承継のケースを見聞きするのですが、時々、戦略転換で残念な結末を迎えている事例を見かけます。


例えば、世代交代が行われた後、それまで先代がコツコツと守り抜いてきた手堅い商売をあっさりと捨て去り、後継者の趣味をそのまま本業に切り替えてしまう愚行が実際にあります。当然ながら、会社としての強みが一切生かされないので失敗します。最もひどいケースですと、BtoBのビジネスだったものを一気にBtoCへ切り替え、短期間で倒産なんてパターンもあります。


過去のブログでも書いたことがあるのですが、会社で取り組むべきビジネスというのは趣味ではないのです。創業者であれば話は別ですが、創業者以外の後継社長が自分の趣味で会社の方向性を変えるようなことは大体失敗します。趣味とビジネスを混同しないように注意してください。


趣味は遊びです。ビジネスは遊びではありません。

社長だからといって、自分の趣味を会社のビジネスに持ち込んではダメなのです。そこは間違えないようにしてください。権限あるから何やってもいいという話じゃないんです。



マネジメント手法について

 会社をどのように仕切っていくのか?これも手本があるわけでもなく、ある意味自由です。多くの後継者が犯す過ちとして、先代と同じような会社の仕切り方をしようと意図せずに真似てしまう。前社長が創業者の場合、トップダウンによるスタイルが組織に浸透してしまっているわけですが、後継者がこれを真似しようとしても、おそらくうまくいかないでしょう。創業者であるから許された無茶であり、後継者がそれを真似ても誰も動いてくれません。


特にファミリービジネスの後継者は注意したいところが、マネジメントのやり方です。後継者が創業者の実の子孫であった場合は、最も注意が必要です。なぜならば、周囲の人たちは後継者に対して面と向かって苦言を呈すことが難しい。後継者も賢くない人は、親の威光を借りて社員を脅すようなマネジメントをやってしまう人もいます。このような恐怖政治的なマネジメントが行われてしまうと、その会社は世代交代と同時に終わります。


身近な例として、ビックモーターが思い浮かびます。ビックモーターに限らずですが、恐怖政治的なマネジメントを行う後継者には共通した特徴があります。それは、若いころに本当の意味での苦労を経験しておらず、また輝かしい活躍の実績がなく、地味な存在であった人が多いのです。ビックモーターの副社長も高学歴ではあるようですが、サラリーマン時代に頭角を現すようなデキル人材ではなかったようです。家業に入り、創業者の息子という理由だけで高い地位に就き、それまで人の上に立った経験がない人生で初めて強力な権力を握ることとなり、これまでの不遇な人生を取り戻すかのように、思う存分、権力を行使し弱い立場の社員をいじめ抜くかのようなマネジメントを行う。ビックモーターだけではありません、このような話は時々耳にする話です。


実力で輝く、人から称賛された経験がなく、気の弱い後継者に限って冷徹な態度で立場の弱い社員を脅す経営をしてしまうのが怖いところです。都会であれば転職の機会も多いので、社員の皆さんは転職でその場から脱出できますが、田舎となると気軽に転職できるわけでもなく、不遇なサラリーマン人生を強いられる人も実際問題出てくる。


何とかしないといけない問題であり、先日、一緒にお酒を飲んだ某会社の社長さんが、この問題について何とかしたいと力説されていました。確かに社員の皆さんにとっては気の毒な話ですよね。



メディアへ出るという自己顕示欲求

 私は個人的にこれが一番嫌ですね。自分が後継者だった時代、できる限りメディアに出ることは避けていました。なぜなら経営者として自分が未熟であることは自分が一番わかっていましたし、社長の息子である自分が得意げにメディアに出たら社員がしらけると考えていたため、私は殆どメディアには出ませんでした。しかし、いるんですよね、出たがりな後継者というのが。。。


確かに会社の存在を知ってもらうという意味でメディアに出ていくのは戦略としてはアリなんです。しかし、それが自己顕示欲を満たすための露出であった場合は完全にアウトです。そんなことは社員であれば、秒で見抜きます。メディアに後継社長がよく出る会社の社員は、大体がシラケています、引いています。それに気が付かない後継者はダメですね。

自分のやっている行為が、いかに社員のやる気をそぎ落としているか高感度でキャッチできていない後継者は、まず組織を潰す、そして最後に会社を潰す。


くれぐれもメディアに出る際には、自己顕示欲を満たす手段とならないように注意してください。




まとめ:自由 と 責任について

ここまで書いてきたように、社長って大きな権限があり、やろうと思えば自由にできるんですよ。特にファミリービジネスのような所有と執行が同一の場合、持つ権限は絶大なものとなり歯止めが利かなくなります。


社長という職業は、自由な裁量が与えられています。しかし、その自由な裁量というのは会社の繁栄、社員を幸福に導くために使う自由であり、社長個人のための自由ではないのです。そして、自由というのは無条件ではなく、経営者として会社を守っていく大きな責任を伴う自由なのです。上場企業であれば、社長がおかしなことをやり始めたら簡単にクビにされてしまいますが、非上場、ましてファミリービジネスの場合は、いつまでも悪魔のような経営者が会社の運営をやれてしまうリスクがあります。


これを防ぐには、まず後継者本人が自分の身の程を正しく理解している必要があります。どれだけ仕事ができる人であっても、謙虚さと学ぶ姿勢、上昇志向は忘れてはいけない。

経営という仕事は神聖な仕事であり、好き勝手やっていいというわけではないのです。


また、経営を監視するという意味でも社外取締役、監査役は中小企業であってもいた方が良いと思いますし、取締役会もちゃんと機能するように運営すべきです。ただ、ファミリービジネスの場合は、書いたように所有と執行が同一なので難しいところがあります。万一、後継者が問題のある経営者であった場合、これを諫めるのは創業者や先代社長しかいないでしょう。それすらままならない会社は、おそらく傾いていくと思います。



会社の経営って、本当に怖いんですよ。経営者が少しでも油断したり、奢ったりしたら一気におかしくなります。経営者には普通のサラリーマンには持てない自由がある。

しかし、その自由というのは自分のために使う自由ではなく、また責任を伴う自由であることを忘れないでください。



以上、ランナーズ関根でした。





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