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  • 執筆者の写真Takeshi Sekine

「お久しぶり、が原因かも」

更新日:2022年1月25日

後継者と創業者との方針が合わない事は、ある意味当然のことであり、それを創業者が受け入れる度量があるかどうかも事業承継を左右する大きな問題です。今回は事例も踏まえ事業承継のリスクに関するお話です。



創業者の心理

親子であっても人格は全く別であり、価値観が違ったり性格も大きく違うことは普通にあります。したがって経営者として全くタイプが違うという事は、ある意味、当たり前なんですね。





時代と共に経営のやり方は変わってくるでしょうし、社員の価値観や考え方も変わります。一般的には、世代が変ると会社を改革し、時代に合った経営に改めようとアトツギ経営者は邁進するわけですが、創業者が存命の場合、横で見ていて自分の価値観に逢わない、あるいは成功し始めるとだんだんと面白くなくなってきて、自分の存在意義を感じる事が出来なくなり、強硬な手段に出て後継者を抹殺してしまう事も現実として起こります。アトツギ経営者が本当に不適合な人材であれば、仕方ない場合もあるかもしれませんが、必ずしもそういうケースばかりとは限りません。


有名なケースとして、老舗和菓子屋の「赤福」の事例があります。日本経済新聞にも掲載された事もあり、今でも事業承継の悲惨な事例として話題に出るケースです。


日本経済新聞より:老舗和菓子「赤福」、突然の社長交代 後継は母


赤福はご存知の方も多いと思いますが、品質不正の問題で世間を騒がせた企業であり、創業者が引責辞任して身を引き、その後、長男が後を継いで会社を改革し、品質問題をクリアし信頼回復に努め、業績も上り調子でしたが、長男は突然、社長を解任され、母親が社長に就任するという事態になりました。なぜ、このような事が出来てしまったのかというと、赤福の株式の80%以上を実質支配していたのが、創業者だったからです。もし、アトツギ経営者が株式を握っていれば、こうはならなかったのですが、赤福の場合は創業者が本当の意味で会社から勇退しておらず、最後に実の息子を転覆させたというのが事の顛末です。


これはメディアに出ている範囲の情報しかないので、何とも判断がつきませんが、記事の情報だけを眺めていると、後継者であった長男が経営者として不適合な人材だったとは思えないです。ただ、伏せられた何か大きな問題があったのかまでは分かりませんので、何とも言えませんが、当時、メディは凄惨な事例として報道していました。


また、星野リゾートの事業承継も有名な話としてメディアで報道されていましたが、星野社長もすんなり社長に就任したのではなく、骨肉の争いの末、社長に就任されているようです。


有能な後継者が会社、社員のために心血を注いで経営にあたり会社を良くしているのに、なぜ先代はそれを受け入れないのか、我慢ならなくなるのか、その心理は創業者でなければ理解できない境地なのかもしれません。普通の親の感覚なら、自分の子供が親を超えて立派な経営をやってくれることは喜ばしい事と思うのではないかと想像しますが、そう思わない、そう思えない創業者もいるようです。赤福のように、改革の目を潰し、会社を逆戻りさせてしまう事も現実の事例としてあるようです。



初めて知る、本当の親の姿

私は、高校までは地元におり親と同居していましたが、それ以降、一緒に親と住むことはありませんでした。したがって、親に対しての印象は子供の頃のままで、自分が大人になってから親と向き合ったことがありませんでした。会社が苦しい時代に、親がどんな苦労をしていたのかも正直なところわかりません。父親の印象は、温厚で仕事熱心、人にも優しく、面倒見の良い人という印象を持っていました。


34歳になってから家業の仕事に関わるようになり、だんだんと職場での父親の言動を見るにつれて、親としての父親と経営者としての父親の人格の差に驚いた事を覚えています。尊敬できる面もありましたが、かなり自分とは考え方や価値観が違うなという事は早い時期から感じていました。


おそらく、私と同じような事を感じているアトツギ経営者の方は多いと思います。

家で見せる親の姿、会社で見せる経営者としての姿。あまり変わらない人もいれば、全く違う人もいると思います。私の場合は、こんなにも違うのかと思う場面が多々ありました。


ここで思ったのですが、事業承継でよく聞かれる親子の対立の原因は、実はこれではないかと。経営者の子供は、遠方の学校に通ったり、留学したりと親と離れて暮らす期間がサラリーマン世帯の家より多い事もあると思います。そうなると、その離れている期間、コミュニケーションは当然ながら希薄となり、子供は親と離れて自分の価値観を身に付け、大人になっていく。小さいころから親とべったりで、親の価値観が完全に刷り込まれた子供であれば、ひょっとすると対立は起きないのかもしれません。その場合、思考が同質化するので世間常識と照らし合わせておかしなことも、「当然」として受け入れてしまうかもしれない。


つまり、「お久しぶり」の親子関係だと「揉める」という事なんではないかと思いました。


アトツギが世間の波に揉まれることなく、他人の価値観に触れることなく、学校卒業後に家業へ入ってしまうとどうなるか。。。それはそれで、また別のリスクもあるだろうと思います。私も今、経営の経営をやっていますが、仮に子供が跡を継ぎたいという意思があるのであれば、やはり外で数年は働かせると思います。外で辛い目に遭ってこないとダメだと考えるからです。


結論としては、難しいところですが、最終的には「創業者の度量」にかかっているのではないかと思います。自分が築いてきたものを破壊してしまうような後継者であっても、後継者を信じて影で支えてあげれる度量があれば、アトツギ経営者は思い切った経営ができます。


逆に、本当に困った時、普段はやり取りがなくても、見守ってくれているという感覚が後継者にあるならば、創業者に相談する事もあるでしょう。普段から創業者の意向に従うようプレシャーをかけ続けられると、そうはならないと思います。



いずれにせよ、創業家の人たちは、一族の損得を優先して会社を経営するのではなく、世のため、働いてくれる社員、取引先、顧客のメリットを考えて経営を続ければ間違いは起きないと私は思っています。






終わり


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