先週に続きビックモーターの報道がたくさん出ていますが、社内統治について恐怖によるマネジメントが横行していた事が注目されています。この問題は、渦中の企業に限った話ではなく、中小企業から大企業に至るまで起こり得る話です。今回は、力でねじ伏せるタイプの経営者が有する特徴について書いてみます。

強権的なマネジメントが生じるタイミング
現代では、パワハラという行為が犯罪として認められる時代となり昭和時代と比較するとかなり強権的なマネジメントは減ってきているとは思いますが、中小企業では相変わらず理不尽な企業統治が行われている会社も多数存在します。
悲しいかな、やはりその多くは同族経営で行われているような気がします。
創業社長というのは、苦労して会社を大きくしてきた人であるため、時には社員に厳しく結果を求める事もあると思います。また企業が成長していく過程で、トップによる強力なリーダーシップが必要な場面もあるため、一概に良し悪しの判断をするのは難しい面もあります。これは私の経験則ですが、創業社長は厳しい面もあるが一緒に苦労を共にしてくれた社員に対しては、やはりどこかで情がありブッタ切るようなことはしない。仕事に対しての成果は厳しく求めるのですが、社員が自殺を考えるレベルまで追い込むような創業社長は比較的少ないはずです。
一方で、会社が安定期に入り世代交代が行われ、創業者の息子など同族の人間が本格的に経営のかじ取りを始める頃から、創業家を中心とした経営層からの強権統治が始まる事があります。ビックモーターが正にこのパターンだと思われます。
これも、私の経験からの推測ですが、強権政治を行う人の特徴として以下の事が考えられます。
強権政治を選択する経営者の特徴
サラリーマン生活で活躍や評価された経験・実績もなく、いきなり家業で重要なポジションに就いている
自分に実力がないことを本人も分かっている
プライドが非常に高い
自分が傷つくことを恐れている(=自己防衛が強い)
親友と呼べる友人が少ない
大方、このような特徴を持っている人が、権力による企業統治を行う傾向が高いのではないかと思います。また、このタイプの人は強烈な何かに対するコンプレックスを持っていて自分を守ることに必死だったりします。なので、全て当てはまるわけではありませんが、このタイプの人はとてもじゃないが自分一人で起業などできる人種ではないのです。
獲得したポジション、権力をテコにして社内を恐怖で統治していきます。 リスクには極端にアンテナが高く、ビックモーターの報道でもありましたが社員の携帯電話の発着信履歴まで確認するような徹底した監視が行われていく。
おそらく、創業社長であれば、ここまでの事はあんまりやらないと思います。ただ、創業者の多くも性悪説で社員を見ている人も多いので、結構、すごいことをやっている人も中にはいます。
じゃあ、このような会社をどうやって救えるのか?
ビックモーターの報道でも言われている事ですが、強権政治を行ったオーナー一族が支配できる量の株式を握っている間は、まず変わることは無理でしょう。今後も株を握っている限り、何らかの手段で会社に影響力を及ぼし、ほとぼりが冷めたら復権してくるでしょう。
これを防ぐには、身売りするしかありません。
創業者の脇を固めていた取締役も全て退任させ、株式を第三者に売り渡し、創業家の支配が及ばない状態にしない限り難しいというのが現実的な話だと思います。
こうなる前にできることとして取締役会による意思決定に切り替えることです。私も過去に規模の大きい同族経営の会社を親族の一人として経営していましたが、私の発案で取締役会設置会社へ移行させ、親族だけで固められていた役員を古参社員の数名を役員に選出し、監査役もおきました。月一回、必ず取締役会を開催するように改め、議事録も作成して全社員へ公開するようにしました。
しかし、ここまでやっても創業家の人たちが支配株主となっている場合は、取締役会が存在していたとしても株主総会で何でもできてしまうというリスクは最後まで残ります。
取締役会のメンバーを脅すことで、取締役会の議決を制御することもできてしまいます。
これが法的にアウトなのかは分かりませんが、現実問題、そういうことが起きてしまう。
強権政治を回避する備え
完璧ではありませんが、以下のような事が考えられます。
取締役会設置会社へ移行する
取締役会の議事録はできる限り社内へ公開する
社外取締役、監査役を置く
取締役会規定・役員規定を整備する
特定の一族が株を持ち過ぎないようにする
これは本当に理想論の話です。創業社長は、自社の株式を他人に渡すことを極端に嫌がります。なので、あまり現実的ではないのですが、取締役会に社外取締役や監査役を設置する。人選は、会社と利害関係の一切ない人を選ぶ。これが現実的な対策になるかもしれません。
ただ、これとて同族経営の場合は、社長が気に入らないと簡単に無視したりするので運用は非常に難しい話です。そもそも、人選の段階で創業家の息のかっかた人選が行われてしまうと、全く意味のない取締役会となってしまいます。
社外取締役、監査役を設置するということは、創業家の人間が自由にできる裁量を大幅に狭めてしまうことになるので、普通は支配している創業家の人たちは嫌がるはずです。
ただ、これもトップの考え方次第です。より会社を健全な状態で成長させていこう、今までは会社が一家の所有物であったが、これを公器の財産として共有し社会に貢献していこうという志の高い経営者も中にはいますので。
いずれにせよ、強権政治は良くないです。有能な社員は気が付けば辞めている、人の出入りが激しく、気が付けばイエスマンの社員であふれかえる会社になる。
私と関りを持つ、後継者の皆さんには、強権を振るう経営者にはなって欲しくないなと思います。
強権による統治ではなく、実力、そして人間力で社員を魅了してください。それが最強のマネジメントであり王道です。
以上
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