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  • 執筆者の写真Takeshi Sekine

経営者が理解すべき、株主総会・取締役会の仕組

 ファミリービジネスでは「株主総会≒取締役会」になっている会社も多いと思いますが、何がどう違うのか厳密に理解しておく必要があります。後継者の株式保有比率が低い(厳密には66.7%以下)場合は、理解しておかないと自分の身が危なくなるリスクもあるので現時点でよくわからないという方は、是非、読んでみてください。


 


株主総会と取締役会の大まかな違い

 ご存知の方が大半だと思いますが、会社の運営、いわゆる業務執行を行うのは取締役であり取締役会です。その取締役を誰にするのかを決めるのが株主総会(=オーナー)という関係があります。従って、株主の意向に反する経営をやってしまうと、取締役はいとも簡単に株主総会でクビを切られてしまうという事です。


株主総会は、会社の運営を行う上で最も重要な定款の内容を変えたり、前述の通り取締役・監査約の選任、解任など最も重要な人事権を持っていると考えてください。また取締役の役員報酬を決定したり、株主への配当金を決めたりすることもできます。但し、定款に記載することで取締役会へ議決を委任することもできるので、すべての会社に於いてこうなっているとは限りません。詳細は、ご自身の会社の定款を熟読してください。



株式公開企業であれば、株主は経済合理性を優先に取締役の人選を行います。しかし、ファミリービジネスでは、取締役の選任・解任に限らず、その他重要事項であっても経済合理性以外の理由で物事が決まってしまう場合があり、いろいろ厄介な事が起きてしまうのです。

私も経験があるので、そりゃーもうカオスですよ。理解できないことが時には起こります。




持ち株比率による議決権の違い

 同族経営では、創業者が家族や血縁関係のある親族へ株式を持たせている場合があります。最初は何も問題は起きないかもしれませんが、世代交代が進むと株式が分散し集めようと思ったときに集められなかったり、株主総会での意思決定で思わぬ障害になることもあります。では、問題の原因となる危なそうな議決権にについてのみ簡単に解説します。

持株比率 10%以上

解散請求権

会社の解散を請求できる

33.4%以上

株主総会特別決議の単独否決

定款変更、監査役解任、自己株式の取得などを請求できる

50%以上

株主総会普通決議の単独可決

取締役の選任・解任・監査役の選任、意思決定の大半を自ら行える

66.7%以上

株主総会特別決議の単独可決

重要事項の殆どを単独で意思決定できる


という事で、66.7%を代表取締役が保有していれば、会社を掌握することができる事が分かると思います。代表取締役に株式が集約されている場合は問題ないのですが、これが兄弟間や親戚などに分散していると、ややこしいことになります。問題が起きるのは、決まって経営者の交代が生じる時。これまで経営に一切口出ししてこなかった少数株主が、いきなり団結して会社に要求を突き付けてきたり大変なことになります。


株式公開企業であれば、そもそも経営のかじ取りを担う代表取締役であっても多数の株主から選任されて経営を任されているという事を分かっているので、株主総会議決によっては自分の身が危ないことを覚悟の上で仕事をしているわけですが、ファミリービジネスでは意外とその認識が希薄になっている事が多く、経営者の交代が生じるまで心血を注いで経営に貢献してきた後継者候補が、親族を含めた株主総会によっていきなり取締役から外され、それまで一切経営にかかわってこなかった親族の一人が代表取締役に就任してしまうという事もリアルに起こり得ます。これが現実のものとなってしまうと、経営が一気に傾いたり、社員が一斉に退職してしまったりなど、中小企業では深刻な事態を招く事もあり得ます。


ファミリービジネスに限っては、こうならないように次期社長である後継者へ株式の66.7%以上が集まるように対策しておくことがベストです。本来は100%に近い水準にしておくのが理想です。ただ、株主がお互い協力しあえる人間関係があるなら別ですが、親族間であってもお金が絡んでくるとそう簡単じゃないです。。。







取締役会で行われること

 一般的には、会社の業務執行に関する意思決定や取締役の業務執行の監督、代表取締役の選任・解職などを行います。つまり、会社の日常運転を取締役会が担い、株主は取締役を監督しつつ、非常時事態や超重要な議案については株主総会に諮られるというのが一般的な構図になっています。


ここで注意したい事が、取締役会では代表取締役の選任・解職が決議されます。つまり、誰を社長にするか決めるのは取締役会であり、社長職を解くのも取締役会が行う権限を持っているのです。





ファミリービジネスにおいて注意すべき事

 ファミリービジネスにおいて、もし代表取締役である後継者が株式の66.7%以上を有していなかった場合、どのような事が起こり得るかというと、以下のような事が起こり得ます。


まず、取締役会が存在する場合、取締役会は最低3名の取締役が存在する必要があり、その中で社長を誰にするか?、あるいは社長を交代させるかが議論されます。そして続投、交代のいずれかが決まるわけです。仮に、ここで親族間の争いが生じ、取締役会で解任動議などが出されるとします。


これを確実に取締役会で通すために起案者は何をすると思いますか?

 

想像つくと思いますが、アンダーネゴシエーションが行われます。取締役会が開催される前に、起案を予定している者が他の取締役に働きかけ、解任動議を出すので賛成に回るよう働きかけるわけです。これは防ぎようのない事であり、且つ、本当に代表取締役を務めている取締役がコンプラ違反を犯していたり、経営者としての資質に欠ける人物であるならば、交代させる必要があります。しかし、世の中そう単純な話ではなく、ファミリービジネスでは、意見の食い違い、価値観の違いなどから感情的な争いに発展してしまっていると、まともな理由なく力で状況を変えようとするケースも起こり得ます。


その場合は、株主でもある取締役が他の取締役に対して議案に対する賛成を強要するなどが起こり得ます。株式を保有していない取締役の立場からしますと、自分の人事権を有する株主総会のメンバーでもある取締役から賛成を強要されると、自分の身にリスクが生じるため本意でなくとも賛成せざる得ないこともあります。


これらのアンダーネゴシエーションの結果、実際に取締役会で解任緊急動議が出され、代表取締役が解職されることが起きてしまいます。更には、社長解任に続いてその場で緊急の次期社長選任に関する決議が諮られ、あっさりと次期社長が決まります。事はここで終わらず、株主総会が開かれ取締役会で解職された前代表取締役の解任が決議されてしまうと、前代表取締役は取締役の地位も奪われ、単なる一株主になるのです。


 かなり極端な例として記載しましたが、ファミリービジネスでは現実にこのような事が起こり得ます。株式公開企業では、代表取締役が突然解任され、それを不服として申し立てるケースもありますが、代表取締役への復帰は簡単ではありません。過去にLIXILの瀬戸社長が復帰した例がありますが、これはかなりレアケースだと思います。米国ではChat GPTで有名になったOPenAIのCEOが解職から一転、復帰しましたが、これも超レアなケースだと思われます。 一般的に、取締役会の決議では解任の理由は問われず、「手続き上の瑕疵」がなければ取締役会での解職決議は有効となってしまいます。一般社員の場合、正当な理由なく解雇・解職されたり、不利益を伴う配置転換などは不当労働行為としてみなされ、取り消しされることもあり得ますが、取締役の場合は守ってくれるものがありません。


 まとめますと、ファミリービジネスにおいて後継者は、社員を大切にしつつ、地道な努力を重ねて会社の業績を伸ばしていたとしても、あっさりとクビにされてしまうリスクがあるということなのです。どれだけ真面目に仕事に打ち込んでいたとしても、やっていることがどれだけ正しいとしても関係ないのです。株式を握っている者が会社を支配する。これが資本主義であり、株式会社の仕組みです。


なので、ファミリー企業における後継者の皆さんは、株の問題を棚上げして結果を出すことに邁進するだけではリスクがあるという事なのです。株の問題は避けては通れません。


ということで、ファミリービジネスでは株式譲渡・相続の問題点として税金にフォーカスされる事が多いのですが、実際には後継者の身を守るという観点でも株式を集める対策が重要だという事をご理解頂けましたでしょうか?


私自身も、後継者だった時代、66.7%を超える自社株を有しておらず、正直なところ怖くて仕方なかったです。「いつ、何をされるか分からない」という恐怖を感じながら仕事をしていました。これでは仕事に全精力を打ち込めないですよね。かなり辛かったです。


株式の問題は、税制面だけでなく会社法にも詳しい税理士事務所にご相談されるか、弁護士、税理士双方に相談すること。また、必要に応じてセカンドオピニオンを求めるようにしてください。





以上

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