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執筆者の写真Takeshi Sekine

「同族経営の功罪」

更新日:2022年1月25日

日本の9割以上の会社が中小企業です。中小企業では同族経営の比率が高く、同族経営企業の成長が日本経済、国民所得に直結すると言っても過言ではありません。アトツギ経営者の皆さんは、それだけ大きな責任を負っていますし、その反面、成果も期待されているという事になります。今回は同族経営の功罪についてお話します。


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同族経営の功


先祖代々、受継がれるファミリービジネスは生存率が高い事は良く知られた事実です。その理由として一般的には以下の事が挙げられています。

  1. 意思決定の迅速さ

  2. 危機やチャンスに遭遇した際のファミリーの協力体制

  3. 創業者から受け継がれる経営理念の継承と実践

  4. 安定株主が存在する事で、長期的な経営判断が可能となる

  5. 後継者は十分な教育を受けた者がファミリー内から選ばれ、経営品質が維持される



うまく行く場合は、全くこの通りです。創業家の人たちは、社会貢献、一緒に働いてくれる社員、その家族、取引先、顧客を大切にし、自社の利益だけでなく利害関係者すべての利益を考慮し、健全な経営を続けます。これは、世界共有の特徴です。創業の精神・価値観をしっかりと守り、素晴らしい経営を続けるファミリー企業は存在します。



全ての同族経営企業、中小企業がこのような会社ばかりであれば、我々のようなコンサルティング会社が存在する必要はありません。しかし、現実としてコンサルティングというビジネスが成り立っているという事は、それだけ課題を抱えるファミリー企業が多いという事の裏返しでもあります。



では、私の経験から感じた同族企業の弱点・課題を解説します。今まで見聞きした事例となっており、私が経営してきた会社で起こっている事象ばかりではありませんのでご承知おきください。





同族経営の罪


  1. 同族内での責任の所在が曖昧となり、失敗しても誰も責任を負わない

  2. 会社の資産と個人資産区分けが曖昧になる=創業一族の私物化が見られる

  3. 投資や新規事業などの意思決定で集団浅慮が生じ、安易に手を着けてしまう

  4. 経営は一族が牛耳ってしまうため、役員クラスの人材が育たない

  5. 経営に対する外部の目が存在せず、経営の緊張感がない

  6. 都合の悪い事は、社員に知らせず、経営の透明性に欠ける

  7. 世代交代が進むと、特権階級意識が醸成され、経営に関わる創業一族が世間離れしてしまう

  8. 同じく世代交代が進むと、経営メンバーが経営危機に直面する事が少なくなり、本当の危機に直面した時、対処できなくなる


このようなリスクを真剣に考えている企業は、社外取締役を導入したり、上場企業では指名委員会等設置会社に移行するなど、執行と所有を分離したり、執行に一族が関わっても創業家による独裁経営が出来ないような仕組みを取り入れている企業も多く存在します。


一昔前の時代であれば、それ程、経営に対する透明性というのは問われませんでしたが、現代は違います。象徴的な事例としては、韓国の財閥一家による経営は問題視され世界的なニュースとして報道されましたので、皆さんもご存知のことと思います。



それだけ、同族経営は当事者が自制しないとリスクが高いという事なんです。

アトツギ経営者の皆さんは、先祖が残してくれた会社を引継ぐと共に、今、一緒に会社で働いてくれている社員、そして社員の家族の将来も左右してしまう程の影響力を持つ存在なのだという事を十分に理解して経営に臨む必要があります。


”良い会社”の定義、条件は時代の変化によって変わりますので、その時代時代で経営を担っている一族のアトツギがベストと思える経営を行うしかありません。




【外から学ぶ】

これは私の経験から導き出された結論です。同族企業の場合で、先代が親、後継者が子供の場合、仕事も生活も一緒というケースは珍しくありません。そうなると、子供のころからずっと親としての先代から教育を受けていてるので、親の常識=自分の常識となるのは自然の流れです。


しかし、これが全て上手くいくかというと、意外とそうでもないのです。創業家の皆さんは、サラリーマン家庭の人より裕福だったりします。家柄も立派なご家庭も多い事でしょう。そうすると、ものすごく偏った思想に染まるリスクがあるのです。ストレートな書き方をすると、”世間ずれ”した考え方に染まるリスクがある。自分では全く意識していないのに、第三者からアトツギを見ると”上流感”が漂ってしまうのです。外観から上流感、セレブ感が漂うこと自体は全く問題にはなりません。ただ社員に何かを見せびらかすような愚業は避けましょう。


問題となるのは、人が困っているのを見た時、あるいは人からアドバイスや意見をもらう時、問題が生じ自分が先頭に立って動かなければならない時など、こういう場面で、一人の人間としての度量が試されます。少しでも”上から目線”のオーラを相手が感じてしまうと、うまく事が進みません。


全ての同族経営のケースでそうなるとは言い切れませんが、先祖が立派な家柄であればあるほど、このような事が無意識のうちに生じてしまいます。



では、これをどう回避すればいいのか?

外から学ぶしかありません。


家業の仕事を手伝う前に、サラリーマンを数年経験するも良しです。ただ、目的によります。私が親の立場だったとして、子供に会社を継がせる気があるなら、”サラリーマン時代は良い仲間、一生付き合える仲間を作る期間として過ごせ”とアドバイスすると思います。


また、親の会社に入ってからも、家族以外の人と付き合いを大切にすることがとても重要です。それがないと、だんだんと自分も一族の考えに染まり、世間ズレしていた場合に気づけなくなるからです。これは、とても重要な事です。できれば、経営者同士の集まりだけではなく、小学校時代からの幼馴染だったり、全く関係ない業種の人とか役所の人でも良いと思います。常にいろんな価値観の人たちと接する事で、”肌で世間を感じる”のです。繰り返しますが、これ、すごく大事です。


アトツギの皆さんは、”贅沢したい、社長という地位が欲しい” こんな気持ちで跡取りになる人は殆どいないはずです。みんな、関係者がハッピーになれる会社となることを望んでいるはずです。であるならば、”外から学びましょう”。

染まらないようにしましょう。







終わり

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