AIが書いた履歴書に騙されない。面接で本物の人材を見抜く方法
- 関根 壮至

- 5月17日
- 読了時間: 5分
経営者のためのブログ Vol.256
AIが書いた履歴書に騙されない。面接で本物の人材を見抜く方法

「最近、書類選考が難しくなった」
採用に関わる経営者・人事担当者から、こういう声をよく耳にするようになりました。応募者の履歴書や職務経歴書が、以前に比べて格段に整っている。論理的で、読みやすく、アピールポイントが明確に書かれている。
ところが面接に呼んでみると、書類の印象と本人が一致しない。何を聞いても答えが薄い。自分の言葉で語れない。
この「書類と本人のギャップ」の原因の一つが、AIによるレジュメ作成です。
ChatGPTをはじめとするAIツールを使えば、職務経歴書や自己PRを短時間で整った文章に仕上げることができます。応募者がAIを活用してレジュメを作成すること自体を責めることはできません。ただ、採用する側にとっては、書類だけでは本人の実力や人柄を判断することが、これまで以上に難しくなっているのは事実です。
では、どうすればいいのか。
■ 書類で見るべきことが変わった
まず前提として、書類選考の意味が変わりつつあることを認識する必要があります。
これまでの書類選考は「この人は仕事ができそうか」を判断する場でした。でもAIが整えた文章が溢れる今、書類で分かるのは「AIを使いこなせるか、あるいは使える環境にあるか」程度の情報になりつつあります。
書類は「足切り」の最低ラインを確認する程度と割り切り、本当の選考は面接で行う——この切り替えが、今の採用には必要です。
一方で、書類をまったく無視するわけにもいきません。細部に目を向けると、AIでは補えない「本人らしさ」が滲み出ることがあります。
たとえば、具体的なエピソードの粒度です。「チームをまとめてプロジェクトを成功させた」という記述はAIが書けます。でも「メンバー5名のうち2名が途中で離脱しそうになり、個別に話を聞いて残留してもらった」という具体性は、実体験がなければ書けない。こういった細部に、本人の実像が宿っています。
■ 面接で本質を引き出す「問い」の作り方
書類選考を通過した応募者に対して、面接でどんな質問をするか。ここが採用の本番です。
AIが作った履歴書への対策として有効なのは、「その場で内側から答えを引き出さないと答えられない質問」を投げることです。
事前に模範解答を準備できる質問——「あなたの強みは何ですか」「5年後のビジョンを教えてください」——は、今やAIが完璧な回答例を用意してくれます。応募者がその答えを暗記・応用してくれば、面接官には見分けがつきません。
そうではなく、その人の内側にあるものを引き出す質問が必要です。
いくつか例を挙げます。
「これまでの仕事で、本当に悔しかった瞬間を一つ教えてください」
失敗や挫折の経験は、事前に用意はできても、感情の温度までは作れません。その人がどんな場面で悔しいと感じるのか、どう立て直したのか?この答えに、人柄と仕事への向き合い方が出ます。
「今の職場(または前の職場)で、あなたが一番評価されていないと感じることは何ですか」
ポジティブな自己PRではなく、自分への不満や未消化の感情を問う質問です。自己認識の深さと、環境への向き合い方が見えます。準備していない角度からの質問なので、素の反応が出やすい。
「もしこの会社に入らなかったとしたら、次に何をしていますか」
「御社に入りたい」という表面的な動機ではなく、その人が本当に何をやりたいのかを問う質問です。この問いに対して、具体的なビジョンや別の選択肢を語れる人は、自分の意思を持って動いている可能性が高い。逆に答えに詰まる人は、就職活動そのものが目的になっているかもしれません。
■ 「答え方」より「考え方」を見る
面接で見るべきなのは、答えの内容だけではありません。
その人がどう考えているかのプロセスが、答え方に出ます。
少し考えてから答えるのか、すぐに答えるのか。答えに詰まったとき、どう立て直すのか。自分の言葉で語っているのか、どこかで聞いたような言葉を並べているのか。
特に注目したいのは「沈黙」への対応です。難しい質問を投げたとき、すぐに何かを話し始める人よりも、少し間を置いて「うーん、それは……」と考えてから答え始める人の方が、実は自分の頭で考えている証拠であることが多いです。
即答できる質問しか用意しない面接官と、あえて考えさせる質問を投げられる面接官では、見えてくる人物像がまったく違います。
■ 中小企業の採用で特に意識したいこと
大企業と中小企業では、採用で求めるものが違います。
大企業は「ポテンシャルのある人材を採って、社内で育てる」という前提を持てます。でも中小企業では、即戦力性と同時に「この会社の文化・規模感に合うか」という適合性が重要です。
中小企業の面接で追加で確認したいのは、「曖昧な状況で動けるか」という点です。
役割が明確でない、リソースが限られている、一人が複数の仕事を兼務する——こういった環境を経験したことがあるか、あるいはそういう環境を苦にしないかどうか。
「これまでで一番、自分でゼロから作り上げたと感じた仕事は何ですか」という質問は、その人の自律性と行動力を測るのに有効です。
■ まとめ
AI時代の採用面接で意識したいポイントをまとめます。
書類は「最低ラインの確認」と割り切り、具体的なエピソードの粒度だけを拾う。面接では「模範解答のない質問」を用意し、その人の内側から出てくる言葉を引き出す。答えの内容より、考え方のプロセスと言葉の温度を見る。
「立派な履歴書」に惑わされず、「その人が何者か」を面接で見極める。その技術が、今の採用には必要です。
─────────────────
経営者のためのブログ Vol.256
ランナーズ株式会社 関根壮至
─────────────────



コメント