経営者が「数字を読める」とは、どういうことか
- 関根 壮至

- 6月7日
- 読了時間: 4分
経営者のためのブログ Vol.259
「決算書が読めるようになる集中講座」というセミナーが、世の中にはたくさんあります。
損益計算書の見方、貸借対照表の構造、キャッシュフロー計算書の読み解き方——。
こういった内容を教えてくれる場は、経営者向けにも数多く存在します。
それらを学ぶことは無駄ではない。
でも、それで「数字が読める経営者」になれるかというと、おそらくなれない。なぜなら、経営者にとっての「数字が読める」は、指標の意味を知ることとはまったく別の話だからです。

■ 世間が言う「読める」と、経営者が言う「読める」は違う
一般的に「決算書が読める」とは、こういうことを指します。
粗利率とは何か、自己資本比率が高いとどういう意味か、流動比率が低いと何が問題か——数字の定義と、その数字が示す状態の意味を理解している状態です。
これは確かに大事な知識です。
でも、経営者にとっての「読める」は、ここからさらに先にあります。
「なぜ、この数字になったのか」を説明できること。
粗利率が2%下がった。それは知っている。でも、なぜ下がったのか。どの商品の、どの取引先との、どんな動きが、この数字を作ったのか。会社の中で何が起きているから、この数字が出てきたのか。
それを自分の言葉で語れて初めて、経営者は「数字が読めている」と言えると私は思っています。
■ 数字は「結果」であり、「映し鏡」だ
試算表に並ぶ数字は、自社で起きた出来事の結果です。
売上が落ちた。それは現象です。なぜ落ちたのかは、数字の中には書いていません。ある取引先との関係が変わったのか、営業の動きが鈍ったのか、季節的な要因なのか、競合に奪われたのか。その答えは、現場にあります。
数字と現場を往復できる経営者は、試算表を見た瞬間に「あの件が影響しているな」と気づきます。逆に、数字だけを見ている経営者は、何が起きているかを知るために、また別の報告を待つことになる。
この差は、財務知識の差ではありません。自社の現場と数字を結びつける経験の差です。
■ では、どうすれば「読める」ようになるのか
私自身は、経営の修羅場の中で数字が読めるようになりました。追い詰められた状況の中で、毎月の試算表を繰り返し見続け、現場の動きと照らし合わせ続けた。それ以外の方法はありませんでした。
セミナーで体系的に学ぶことは、入口として意味があります。でも、本当の意味で数字が読めるようになるのは、自社の試算表を繰り返し見続けることによってしかありません。
なぜなら、数字の背景は会社によってまったく違うからです。
A社の外注費が増えた理由と、B社の外注費が増えた理由は、まったく別の話かもしれない。その会社の現場を知っている人間だけが、数字の裏側を読める。だから、どれほど優秀な外部専門家でも、経営者本人と同じ解像度で自社の数字を読むことはできません。
つまり、数字を読む力は、経営者が自分で鍛えるしかない。
■ 繰り返し見続けることで、何が変わるか
後継者や若手経営者の方に、よく伝えることがあります。
「毎月の試算表を、わからなくても眺め続けてください」
最初は意味がわからなくていい。でも、3ヶ月、半年と繰り返すうちに、「先月と比べてここが変わった」という感覚が出てきます。その感覚が出てきたら、現場の誰かに聞いてみる。「これ、なんで増えたの?」と。
その問いと答えの繰り返しが、数字と現場をつなぐ回路を作っていきます。
決算書の読み方を学ぶより先に、まず自社の試算表を毎月手に取ること。そこに書かれた数字を、自分が知っている現場の出来事と結びつけようとすること。その習慣を持ち続けることが、経営者としての「数字を読む力」を育てる唯一の道だと私は思っています。
経営リテラシーとは、知識ではなく習慣から生まれる。
■ まとめ
「数字の意味が分かる」と「数字が読める」はまったく別の話です。
経営者に必要なのは、財務指標の定義を覚えることではなく、「なぜこの数字になったのか」を自社の現場と結びつけて語れることです。数字の背景をイメージできるということでもあります。これは、コンサルタントにはできないし、おそらく税理士さんもできない。
残念ながら、セミナーでも身につきません。自社の試算表を繰り返し見続け、現場と照らし合わせ続けることでしか育たない。
地味で、時間がかかる。でも、それが経営者の「数字を読む」ということだと私は確信しています。
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経営者のためのブログ Vol.259
ランナーズ株式会社 関根壮至
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