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  • 執筆者の写真Takeshi Sekine

後継者に必要なのは、会社の可視化です

 先代から会社を引継ぎ、はじめて帳簿を見た!という後継者の方もいらっしゃると思います。どうやって先代の経営スタイルから自分のスタイルに移行させるのかご紹介します。



最初にやるべきこと

 この4月から新社長に就任された方も多いと思います。社長に就任される前から財務諸表を読んでいる方もいれば、はじめて見る方もいるかと。

大体の方は、売上や営業利益は何となく聞かされていても借入金がどのくらいあるとか、返済の利率がどのくらいだとか知らない方も多いのではないでしょうか?


社長になるまで現場で一生懸命汗を流して働いてきた後継者の方は、お金関係はノータッチという方も結構多いと思います。しかし、社長になるとその瞬間からお金に関する全責任が肩にかかってきます。まずは、PL(製造原価報告書含む),BSを隅々まで読むことが大事です。 売上や利益は勿論のこと、どんな科目でどのくらいのお金が会社の外へ出ているのか流れを掴むことが最初にやるべき事です。毎月の仕入れや経費支払いがどのくらいあり、借入金の返済がどのくらい発生しているのか大まかにつかむ必要があります。経理の人にまかせっきりにするのではなく、最初は自分で数字を把握してください。そして、少なくとも1年間は支払いや返済が問題ないことを確認することが精神的な健康を考えても必要な事となります。最初は、これを是非やってください。



原価が管理されているか?

 続いて確認すべきは、原価管理の仕組みが機能しているかどうかです。私の経験上、中小企業の殆どが実態はどんぶり勘定となっています。1つ1つの商品、製品、あるいは建設業であれば物件単位で原価管理ができているかどうか確認する必要があります。


創業社長が経営している会社では、原価管理は社長の頭の中というケースが少なくなく、売上や受注状況を見ていれば、およそどのくらいの儲けが出るか創業者は分かってしまいます。そのため、現場では細かい数値の管理が行われず人のやりくり、納期までのスケジュール管理だけが行われるのですが、これは創業者が社長である間は問題ありませんが、経営者が交代した途端に破綻するパターンとなります。


なぜなら、創業社長が持っている『勘』というものは後継社長が引継げない独特の感性だからです。もし、自社の原価が管理されていない場合は、早急に手を打つ必要があります。

原価管理は、商売の基本であり新規事業を始めるにも、この原価管理という土台がない状態で始めてしまうと、本来得られるべき利益が取れないリスクがあるため、世代交代を迎えた新社長は、まずこの原価管理問題、言い換えるなら『どんぶり勘定問題』をクリアすることが最初の関門となります。私の場合も、このどんぶり勘定問題は大きな課題でした。




どんぶり勘定の悪影響

 仮に原価管理が正しく行われていないとすると、例えば5か年の経営計画を作ろうとしてもかなり精度の粗い試算になってしまいますし、業績を伸ばすために借り入れを起こすとしても余計なコストが生じる前提の試算による借り入れは余計な資金を借り入れることにつながりかねません。また、原価管理が出来ていないとコスト削減や業務の効率化に関しても数値で追う事が出来ず、作業時間や人数を減らすといった表面的な取り組みだけが行われ、改善結果がお金(利益)に換算してどう損益に効果をもたらしているのか検証もできない状態となります。


更に問題となるのが、人材の育成です。原価を管理せずに働くという事は、前述した通り人の手配や納期を管理するだけの「作業」になってしまいます。社員が工夫して「利益を増やす」という工夫がされないまま仕事が続くので、経営感覚が全く身に着かない状態となるのです。特に管理職は、部門が滞りなく運営されることを監督するだけではなく、より多くの利益を生み出せるように人・物・金を動かすことが本来のミッションです。


しかし、どんぶり勘定の会社では、このミッションを果たすための指標となる数値情報が管理職に渡らないため、作業を監督するだけの仕事になりがちです。このような点がどんぶり勘定の最も大きな悪影響と言えます。


従って、後継者の方は自分の知識を身に付け、社員を育成するためにも会社を数値化して経営していく事がMUSTとなるのです。




どんぶり勘定を脱却するための準備

 どんな会社でも通期の損益計算書、製造原価報告書、貸借対照表はお持ちのはずです。

おそらくキャッシュフロー計算書もあるはず。これを最低でも四半期に1度は出せるようにしないといけません。在庫があるビジネスであれば、棚卸も4半期に一回は現物でしないといけない。理想は、月次で損益計算書、製造原価報告書が出せるようになることです。


まずは、ここから。続いて、全体だけでなく部門別、拠点別、製品別など細分化できるように掘り下げていく必要があり、これも理想は月次です。


ここまで細分化するためには、現場での原価管理が必須となってきます。例えば、1人の社員がどの案件、どの製品の製造などに一日あたりどれだけ関わったのか実績を管理していく必要があります。間接部門においても、出ていくお金は全て予算化しておいて実績を記録していく必要があります。最初は、まず実態を記録することが重要で、これが会社の可視化につながっていきます。


おそらく、ここのレベルに到達するまで完全などんぶり勘定で経営されていた企業であれば、少なく見積もっても2年は時間を要すると思います。


そして最後のステップとして、記録だけでなく今度は部門や事業単位で予測となる事業計画書を作成し、日々の実績を管理しながら計画との乖離を見ながら運営していけるようになると、ようやく「どんぶり勘定」からの脱却が現実のものとなっていきます。


中小企業の「脱どんぶり勘定」って大変なんですよ。私も後継者時代にやってきましたが、完璧に抜け出せたかというとやり残しはたくさんあります。原価管理は、一回の仕組構築ですんなりと完成することはなく、何度も見直しが必要な地味な作業です。


しかし、これに挑み原価管理がちゃんとできるようになると会社は間違いなく利益を生み出せるようになっていきます。これが、そのまま経営者の経営スタイルの一部になると言っても過言ではありません。



新任社長の皆さん、原価管理の構築は大変な仕事ではありますが、会社の成長を目指すのであれば避けては通れません。早めの着手をお勧めします。





以上、ランナーズ関根でした!






 

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