さまざまな書籍、セミナーで語られるキーワードですが、これが新米社長には意外とできない事なんですよ。
私もサラリーマン時代、「何でこんなことをするんだ?」と上層部からの指示に疑問を感じたことは幾度となくありました。特に外資系で働いていた時は、本国(=本社)からの指示で顧客に対して相当無茶な条件を飲んでもらう場合などは「?」という気持ちが強かった。
これは中小企業経営においても同じことです。トップがいろいろ考えて最適な戦略、戦術として現場に指示を出すわけですが、その目的、狙い、期待する効果などを十分に説明できていないと、現場の人たちは協力するどころか、反発されて逆の方向に進みかねない危険性すらあります。では、なぜ、トップに立つ人がこれをできないのか?やらないのか?
【なぜ説明しない?】
私の推測ですが、以下のことが考えられます。(中小企業の場合)
自分の策に溺れている。(良く言えば、絶対の自信を持っている)
実は、考えた本人も内心、戦略に確信がなくイチかバチかという状態。
指示はトップの自分が出し、社員はそれに従うだけと勘違いしている。
人とのコミュニケーションが苦手で、対話を避ける
業績の悪化で焦る気持ちが強く、急ごうとする。
そもそも、人の話を聞き入れない性格の人。
他にも、さまざまな理由が考えられますが、経営者の人格や性格に因るところが多いような気がします。しかし、これでは社員はついてこないでしょう。
【納得感の重要性】
これは、あらためて書くまでもなく、社員や組織のパワーを最大化するために「納得感」は絶対に必要な要素です。高度経済成長の時代のように「言われた事を黙々とやる」という時代ではない事と、人間は本来、人に支配されて行動する事に抵抗を感じる生き物です。
なので、その原則に反したことをやれば、いい結果は生まれませんし、一方的な指示では潜在的な問題が議論されないまま実行され、実際に危機を招くことになれば、間違いなく現場の士気は下がります。現場の人たちも「言われたからやる」という気持ちで臨むので無責任になりがちです。当事者となる社員と十分に趣旨や目的を議論するコミュニケーションを行い、彼らの立場での意見・アイデアや懸念事項を聞き出し、納得を得られた上で重要な施策は実行するべき。
もう一つ重要な視点は、社員側の立場で考えたとき、一方的な説明だけでなく意見を求められる機会があると「社長は自分を仲間として頼りにしている」という感覚を持てるのです。これは非常に重要です。ここが、社員のモチベーションを最も高めるといっても過言ではないでしょう。この「仲間」としての一体感がすごく大事。丁寧な説明、議論を経て、当事者の「納得感」が醸成されると、そのチームは全力で目標に向かって走り出す。
社員に対してだけではなく、金融機関や取引先、顧客に対しても同様です。何度も語る場面を経験する事で戦略の質が高まり、より効果的な戦略に仕上がっていきます。
【経営者にとってのメリット】
皆の納得感を得るためのコミュニケーションは、経営者自身にもメリットがあります。
それは、メンバーへ説明を行う過程で何度もアウトプットを繰り返す事になるわけですが、話していくうちに自分の戦略で不備を自覚する事があるのです。言い換えると何度も人に説明する事で、自分自身の考えた戦略への理解や思考が深まる一方、問題点にも気づくことがあるのです。このような事を何度も経験する事によって、経営者自身の思考能力、物事を整理する力、コミュニケーションスキルが鍛えられ、自分自身を鍛える事にもなります。
このことに気づいていない人が、実は結構いる。社員から突っ込まれることを恐れたり、説明する事を面倒と思ってしまい、丁寧な説明を避けていると結局は自分が損する事に。
言葉では簡単に説明できるのですが、リアルに実行するには回数を重ねて実践する事が大事です。何回もやって、社員との話し方、会話を盛り上げるタイミング、話の角度を変える仕切り方、そして結論をまとめるスキル、、、経営者に必要なスキルが、この「納得感」を獲得するまでの過程には含まれているのです。
勘違いしてはいけない事として、「きれいな資料」を作る必要は全くない。質の高いコミュニケーションが重要なわけで、時間をかけて素晴らしいPPTを作る必要はない。でも、みんなコレやっちゃうんですよね。資料に頼ろうとする。自分が話せないから、資料に話させようとする。
余談になりますが、経営トップが立派な資料を作り出すと、部下もそれを見て綺麗で立派な資料を作ろうとする。これは全く無駄です。
「トップはきれいな資料を作る事は控えるべき。」
というのが、私が経験の中で学んだことの一つです。凝ったプレゼン資料はいらない。
社員が真似しだして、生産性が一気に下がりますよ。
【アトツギにお伝えしたいこと】
戦略・指示を、「説明する・話し合う」機会から逃げるな
当事者の納得無くして、事は成しえない
懇切丁寧な説明は、自分自身にとっても「学び・気づき」というメリットがある
これをやらないと、民主的な経営とならず、軍隊的な社風になってしまうかも。。。
終わり
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