多くの経営者が、成長を目指して新規事業・新製品の開発に向けて挑戦を続けます。その一方で、かなりの確率でミスを犯す。じゃあ、どうすれば失敗を回避できるのか?
今回は、このテーマとなります。
自分視点から生まれたアイデア
新しいアイデアを思いつく際、出発点となる切っ掛けが何か?
これは、実は大切だったりします。自分視点での思い付きか、あるいは見込み客となる相手の課題、悩みを解消する手段からの起点なのか?
(自分視点の失敗例)
私が過去に失敗した事業の起点を振り返ると、完全に前者の起点でした。
BtoCで且つ、必需品ではないインテリア雑貨の事業でした。この分野では、”あってもなくても良い”という前提条件があるので、よほど消費者の心を掴むデザインなど際立った個性がないと売れない。しかも、一般消費者というのは移り気が早く、飽きさせないように話題となる商品を出し続けないと失速してしまう。やってみて思ったのは、凡人には持ちえない特殊なセンスを持った人でないと継続的にヒット商品を考え付く事が出来ず、行き詰ってしまうという事です。自分で出来なければ、誰かに頼むこともできたかもしれませんが、関わった社員は全員が雑貨に関しては素人で、どうにもならなかった。
デビュー時には、運よく多くのマスメディアに取り上げられ、驚異的に販路が広がり半年ほどで北海道から沖縄まで著名なインテリア雑貨店、大手百科店に商品が並ぶまところまで行き「これはいけるぞ!」とアクセル全開で突進していったわけですが、残念ながら3年ほどで終了となりました。
更にマズイことに、本業との関連性、シナジーが全くない事業だった。アトツギである私の趣味的な発想で突き進み、見事、玉砕というプロジェクトだったのです。
今考えると、事業を始める上でやるべきプロセスをきちんと経ずに勢いでやってしまったことが最大の失敗要因でした。この事業の失敗を経て学んだことは、雑貨のような感性に訴える必要があるビジネスはとてもリスクが高く、自分には向かないという反省が学びでした。
自分の趣味や思い付きで事業を始めるのは、自殺行為だと分かった事業でした。ただ、センスのある人は別ですよ、そういう人、世の中に少数ですが存在しますので。
顧客視点から生まれたアイデア
今度は、見込み客である企業側の視点で課題を考え、その解決策を検討していく顧客視点でのアイデアの実現化についてです。企業向けソフトウェアなどは典型的な例です。
(課題解決型の事業例)
BtoBでは、課題解決型のビジネスが多いのではないでしょうか?顧客となる企業を観察し、経営上の課題を洗い出し、その解決策となる製品・サービスを提供していくことで失敗のリスクは低くなります。ただし、失敗する確率は勿論あります。気を付けるべきポイントを解説します。
そもそもニーズがなかった
笑われそうですが、実際には起こり得る話です。社内であれこれアイデアを話し合い、こんな課題がある、じゃあ、こういう解決策となる製品を作ろう!製品も順調に開発が進み、テストケースとして導入されたお客様でも良好なデータが取れた。
満を持して発売!
シーーーーーン・・・ あれ、売れない。何故だっ?
こんな経験ありませんか?
売り方が悪いのか? 価格設定が悪いのか? 機能が悪いのか?
皆さん、この辺りのチェックはすると思います。そもそも”ニーズがあるの?”という疑いを持たずに進んでいるプロジェクトって意外とあります。
「実はニーズがなかった」という確認を早い段階でやらないケースがあるのです。なぜなら、最初は開発に協力してくれるお客さんも「いいねー、いいねー」って言ってくれるんですよ。そして無料で試験導入できる場合は、喜んで協力してくれます。
しかし!、いざ「買ってください」となった場合に上層部からNGが出される。確かに困ってはいるけど、今すぐ解決する緊急性がある経営課題ではないよね・・・と。つまり差し迫ったニーズがないってことです。
こうなると、100%売れないです。投資もしちゃったし、、、どうしよう。。。となる。
◇開発する前に、製品が出来上がったら本当に買ってもらえるか意思決定者に確認する
こうならないように、BtoBのビジネスでは、見込み客となる相手の経営者と早い段階で接触し、現実的な価格も提示して、実際に買ってもらえるかどうか?確認してください。
中小企業の場合、製品が開発される前の段階で、ある程度の受注見込を持てるアイデアでなければ手を引いてもいいと言えるくらい、重要なプロセスだと思います。
初期投資が重い事業であれば、発注の確約書をもらうぐらいの慎重さがあっても良いと思います。
という事で、ニーズが本当にあるのか? 逼迫した問題をとらえた解決策となっているか必ず確認しましょう。これ、大事です。
売れる導線設計(=見込み客との接触手段)
これも超重要だと思います。私も過去に何度か失敗していますが、多くの中小企業が、ここで壁に当たって失速する難所です。
私のお勧めとしては、商品や事業の中身を詰める前に、本当に自分たちは見込み客であるターゲットに接触する手段を持っているのか点検してください。インターネットで広告出して、SNSで発信して・・・みたいなフワっとした見込では無理です。ネットを使うのであれば、本当にターゲットへ接触できるのか実験してみる。代理店や卸を経由するのであれば、彼らが本当にターゲットに接触できるのか同行して接触できることを自分の目で確かめる。直販の場合も同じです。既存客に売れる商品ならいいですが、今までのターゲットとは異なる相手にモノを売るのであれば、自分たちの営業マンがどうやってターゲットに接触できるのか、いくつか方法を考えて試して、実際に接触できることを確認する。
これがとても重要なプロセスです。ネットで簡単にモノが売れる時代ではありますが、そう簡単な話ではないのです、現実は。
事実、行政機関では、中小企業向けに販路開拓に関する補助金がたくさん出ています。ノーアイデアで専門家に「どうやって売りましょう?」ではなく、ある程度自分たちで売るルートを考えておいて、その検証費用・手段として補助金や専門家を使うようにしてください。
日本の方は、完璧に商品が出来上がっていないと顧客に見せることが出来ない、売り出すことが出来ないと思いがちですが、それでは先に投資が発生してしまい、もし、売れなかったら未回収の投資が大きくなってしまうリスクが高まるのです。
なので、プロトタイプ・モックアップ、絵に描いた説明資料の段階で良いので資料を抱え、本当にターゲットへ接触できるのか?しかも、相当数の見込客に接触できるのか検証することをお勧めします。
新しい事業・製品に取組んでいる時は、どうしても「上手くいく」という思い込みが強くなります。そこをグッとこらえて、地道な検証作業を行ってみてください。
今回、ご紹介したプロセスをきっちり行っていれば、たとえ失敗しても大きな痛手にはならないはずです。この検証作業を如何にスピーディーに行うかが、重要です。
今回は、省略しますが、市場調査(市場規模)、競合製品の調査も重要ですっ飛ばす事はできません。中小企業の場合は、成功してる、成功しかけている企業の真似をするのも一つの手です。限られた経営資源で新しいことを始めなければいけない中小企業には、慎重さとスピードが求められます。
ここまで読んでみると、ありきたりの事が書かれた内容だと思うかもしれませんが、今回、記載したプロセスを完璧にこなせている中小企業は少ないはずです。ぜひ、皆さんの会社で進んでいる新規事業について、今回解説した視点で進捗状況を点検してみてください。
以上
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