「上場=安泰」はもう古い ―変わる企業選びと経営者の選択―
- Takeshi Sekine
- 7月6日
- 読了時間: 4分
私の世代では、上場企業に就職するか、公務員になることが善しとされた世代です。私のブログを読んで下さる方の多くは30-40代中くらいの世代ですが、おそらく我々世代に比べれば、そこまで極端な思考の世代ではないのではないでしょうか?今回は、株式上場に対する市場、経営者の意識の変化についてです。

上場企業に入社できれば安心か?
もう、今の時代では全く安心ではないですよね。昔は、上場企業に入れば給料は多くもらえて社会的地位が得られるみたいな風潮がありましたが、今は全くそんな感じはしない。
むしろ、スタートアップ企業の方が給料がよかったりします。スタートアップに入り、株式上場まで上手く勤務することができれば、ストックオプションなどによって一気に資産を築くことができるというのも夢ではなくなっていますし、私の周りでも現実的にそういう人が何名かいます。
自分の子供が就職する際には、私だったら大企業を目指して入れとは言わないかもしれません。私が経営者だから余計に感じるのかもしれませんが、大企業の社員は極めて狭い業務領域で仕事をしているため、成長期の企業や中小企業のように多能工を求められる環境では適用できない人が多いのです。
なので、大企業に一度入った人は、大企業の中で転職を繰り返した方が良い。大企業も良い面はたくさんありますが、無意識に働いていると「駒」になるリスクがあるので注意が必要です。大企業に入るのであれば、チャンスが開かれているか会社かどうかで私だったら会社を選ぶでしょうね。もちろん、会社が自分を求めてくれないと選ぶも何もないですが。笑。
ということで、現代においては決して上場企業に入れば安心というのは都市伝説です。特に銀行などの金融機関は危ない。私だったら絶対に選ばない業種です。
経営者としての上場は?
株主総会の集中する時期でもあり、連日、新聞で株主提案に関する記事を目にしますよね。昔と大違いです。昔は総会屋がいましたが、今はファンドという存在が企業に対して要求を突きつけるようになった。
これまで日本における上場のメリットは資金調達というよりは「信用」「ブランド」といった効果を得たいと考える経営者が多かったのではないでしょうか?
それが今はどうでしょう?
スタートアップの新規IPOでは、予定していた資金調達が叶わない株式公開が多く、株式公開だけが資金調達手段ではないという見方が増えてきています。また、最近のスタートアップ経営者は上場によって創業者利益を得たいという金銭欲がそこまで強くない人が多いように思います。一昔前のスタートアップ経営者は、株式公開で一財産築くことが多くの人の目標だったと私は思っていますが、今はそういう感じでもない。
むしろ、M&Aによって大企業やファンドに買ってもらう、事業拡張のための資金を調達してより会社を成長させていきたいと考えている経営者がけっこう多いと思います。
また、上場企業でありながら、これまで株主還元を全く考えてこなかった企業では、PBRが1倍割れしていても対策せずにやり過ごし株価が低迷する。そして上場維持の基準を満たせずに上場廃止に追い込まれたり、ファンドから目を付けられ攻撃されたり、会社が他人の手に渡らないようにMBOで非公開化を目指すなどの運命をたどる会社もあります。
経営者として考えないといけないのは、昔と違って(厳密には何ら変わっていないのですが)、株式公開するということは「会社に値段がついて売られる対象(=商品)になる」ということを自覚しないといけない。
他人に買収を仕掛けられるのが嫌なら、上場してはいけない。
中小企業経営者目線での上場
信用を得るための手段としての上場は考える余地があるかもしれませんが、上場して自社が得られるメリットをよーく考えるべきかと思います。
そもそも、会社って上場させるまでの規模まで大きくするのは大変ですし、会社を大きくさせることが必ずしも成功とは限りません。経営者として、自分の人生における仕事のゴールが何なのかによって上場に対しての考え方、会社のあり方についても全然違ってくるかと思います。
私自身のことを考えますと、現在、経営しているランナーズですが、息子が継ぐことはないので、どこかのタイミングでM&Aで売ることになるだろうと思います。
会社で働く社員が困らないように、事業を通じて社会に提供してきた価値が途切れないようにするために会社を売却する。その前に会社をたたむことになったら、経営者としての負けです。
ということで、発散気味の内容になりましたが、
皆さんも上場について考えてみてください。
以上、ランナーズ関根でした。
コメント